KAGETOHIKARI
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奈良県香芝市のヨネセンは、地場産業である靴下用の糸染めからはじまり、創業以来、60数年の歴史の中で、その染色技術を蓄積してきました。カーペットタイルや車のインテリアを彩るカーマットなどから、椅子の張り生地などのインテリア分野へも進出。そして、今回は隈氏が求める表現に挑戦しました。染色工場でありながら、特殊糸の加工にも力を入れているヨネセン。工場でまず目に入ってくるのは、丸編み用のニット機です。90本ものニット針が糸を緻密に編んでいきます。隈氏が求める表現を目指すため、幾度となく試験を行い、ニット針の本数とニット機の回転数の緻密な組合せを計算していきました。さらに特殊ニット機と特殊針により高速回転での加工を可能とすることで、多様な表現ができる糸へと近づけていきます。ニットにする前の糸巻きでは、約40分に一度の交換が繰り返されていきます。トラブルが発生しないように、セットした糸巻きの糸の張り具合が緊張感を持って調整、維持されていきます。さらに工程は複雑です。編み込まれた糸は、真空セット機による熱処理が行なわれることで、斑(ムラ)のないニット形状の撚り糸となります。一度編みこまれた糸はあえてほどかれます。こうして誕生したのが、自然素材に見られる不均一さが美しく表現されたニットデニット糸。さまざまな方向に糸が曲がっているランダムな表情は、隈氏が目指した風合いそのものです。1,4丸編みニット機によるニットデニット糸の作成。隈氏が求める表現に到達するべくニット針の本数と、ニット機の回転数の調整を繰り返していった。カーペットの表現を考慮して、加工ごとに針の本数を入れ替えている。240分に一度付け替えられ続ける糸。糸のテンションを安定させるための管理に、細心の注意が払われる。3 編みあがりの様子。ニットが編まれると、下のノズルから出てくる。このあと、真空での熱処理を、2工程行うことで斑なくニット形状の表現を実現させる。編む株式会社ヨネセン(奈良県香芝市)究極のものづくりに挑戦した「カゲトヒカリ」。そこには、全国の職人たち、技術者たちの叡知と技術が結集された。「カゲトヒカリ」という、新しい表現が誕生した現場を訪ねた。13423435カゲトヒカリができるまで

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