有史以来、人類が巧みに生活の中に取り込んで来た繊維。この素材には、農業、工業、建築、土木、交通、通信、物流、医療など、あらゆる分野に新しいニーズがあります。常にその要望に応え続けてきた創業大正10(1921)年の山本産業が、新たな表現を持つカーペットの織りに挑みました。多種多様な繊維が存在していても、カーペットタイルに使用できる繊維はごく限られた繊維しかありません。その繊維をどのように組み合わせ、加工をするのか。隈氏のデザインコンセプトにあった商品作りのために原糸開発から手掛け、でき上がった糸が、不均一さを美しく表現したニットデニット糸とグラデーションを持つ染色糸でした。山本産業はその糸を織り上げ、製品化に成功しました。どの製法が求められるイメージに一番近いのか。試作を重ね、採用したのが細かいカット&ループでした。カットの糸は、今までにないニットデニット糸の加工方法によって方向性が出ない糸を生み出すことに成功し、一方ループになる糸は、1本の糸に4色をグラデーションに染め上げた特殊染色糸としました。織り上げられていく2種類の糸。カットとループの高低差がつき過ぎるとループが隠れてしまい、高低差が無くなるとカゲが持つ複雑さを表現できなくなります。試行錯誤を繰り返し、ついに理想の高低差を導きだすことができました。クリールにコーン巻きをした糸を一本一本丁寧にセッティングしていきます。でき上がるデザインを想定して、832本全ての糸の位置と量は決まっているので、かかる時間は約3時間。タフト機を通り、織り上がってきた生地が、明るい蛍光灯の光に照らされていました。その美しさは、感嘆の吐息をもらすほどです。織る山本産業株式会社(大阪府和泉市)1コーン状態にした原着ナイロン(ニットデニット糸)とグラデーションの2つの糸を、同時にクリールにセットしていく。クリールは、部分ごとに糸の使用量が異なり、糸の巻量が変わるため、糸1本1本の丁寧なセッティングに2、3時間を要する。2-4セットされた832本の糸が、タフト機に送り込まれていく。クリール番号にセットされた糸が同じ糸道番号を通っているかを確認していく。5ニードル部分にも1本1本糸をセットしていき、クリール番号と同じ糸道を通って針まで糸が来ているかを確認。 6 織り上がったカーペット生地。照明で全体を照らし、不備がないかをチェックしていく。3839134562
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