KAGETOHIKARI
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1楮(こうぞ)の枝の中の芯を取り除く。皮の部分が材料となる。2芯の部分を取り除いた楮を一晩水に浸す。3柔らかくなった楮の皮の部分から表皮のみをヘラで取り除いていく。4表皮を取り除いた皮を一度乾燥させる。5煮沸・塵除が終わった和紙繊維。6和紙に適した粘りを出すため「ネリ」の量を調整する。温度や繊維の質によって変わるため、長年の経験からくる技術が要される。7和紙繊維を流す型をきれいに洗浄する。8和紙繊維を流し込み、型を外す。その下には紐を配置するレイアウトが記されている。9流し込んだ和紙繊維の上に楮の紐を配置する。透過するレイアウトを確認しながら、1本1本紐を配置していく。10この後、上から和紙繊維を流し込む際に配置した紐位置がズレないよう、紐の周りに和紙繊維を流し固定させる。安定した商品をつくるため、この一手間がとても大切。11もう一度、全体に流し込み、上に和紙繊維の膜を作る。12水が流れ落ちたのを確認して型を外し、和紙の壁紙が完成となる。漉く株式会社杉原商店(福井県越前市)約1500年の歴史を持つ越前和紙は、日本初の紙幣や国宝・文化財の保存・復元に使われる一方で、私たちの生活のさまざまな場所でも利用されてきました。そこで培われてきた技術もまた、今回の「カゲトヒカリ」のものづくりに活かされています。建築、芸術、学校等幅広い分野に越前和紙を提供し、近年では10代目社長の杉原吉直氏が和紙ソムリエとしても活躍する明治4年創業の杉原商店もまた、隈氏が求める新しい表現にチャレンジしました。越前和紙の主な原料は、太くて長い繊維を持ち、和紙に強さを与える楮(こうぞ)、表面に滑らかさと光沢をもたらす三椏(みつまた)、虫害にかかりにくいよう保存度を高める雁皮(がんぴ)の植物たち。工程は、これらの皮を水に浸して柔らかくすることからはじまります。煮沸によって不純物を洗い流す塵除(ちりより)、叩くことで結束している繊維を細かく柔軟にする叩解(こうかい)を経て、調整されたトロロアオイなどの「ネリ」を加え調整していきます。そして、流し込みという手法を使い、紙原料を型枠に流し入れてベースとなる和紙をつくっていきます。隈氏が求める色と風合いを実現させるためには、多くの苦労が重なりました。特に、透過性が強い白色は、壁紙として使用するには厚みが必要となります。厚みを持たせつつ越前和紙の風合いを出すために、楮の量を多くして幾度となく試作と施工検証を行い、ついに理想の厚さにたどり着きました。型枠から水が滴りきると、浮かび上がってくるのは、均一な厚さに仕上げられた和紙。その美しさは、息を呑むほどです。さらに、下に敷かれた「紗」のライン構成図に沿って、漉いた和紙の上に職人さんが繊維を一本一本手で置いていきます。目と指によって貼り付けられる楮繊維。こうして隈氏が想い描いた手加工の優しさを持つ和紙の壁装材が創りだされました。1456723891011124445

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